プレイリスト川柳を始めてみませんか【前編】

企画

Walter Walkで初めて記事を書かせていただきます。eclipse1228と申します。

さっそくですが皆さんはプレイリスト川柳をご存知ですか?

えっ、知らない。

もちろん知らなくて当然です。プレイリスト川柳は私が最近(2026年3月)提唱したもので、大きくバズってもいないですし流行ってもいないので、この記事の読者の皆さまはご存知なくて当然かと思います。

プレイリスト川柳とは?

プレイリスト川柳とはどんなものか? 説明するより実作を見ていただいたほうが早いと思います。

「昼休み 阿修羅のごとく パンを焼く」という川柳です。プレイリストとして曲を並べて曲名で川柳(五・七・五)を作っているのでプレイリスト川柳です。

もちろんプレイリスト俳句でもプレイリスト短歌でもよかったのですが、プレイリスト川柳にしたのは短歌より文字数が少なく、俳句のように季語の制約もないので作りやすいと考えたからです。

自作解題をするのは野暮かもしれませんが、山崎まさよしという穏やかそうなイメージのあるシンガーソングライターの「パンを焼く」という曲に、あえて似合わなそうな「阿修羅のごとく」という形容を持ってくるギャップがこの川柳の面白さだと考えています。しかも金属恵比須というプログレッシブ・ロック・バンドです。

プレイリスト川柳の面白さは……

  1. 既存の楽曲のタイトルを組み合わせて川柳を作るという言葉遊び的な部分と、
  2. 川柳(五・七・五)以外にアーティスト名やジャケットという付帯情報があることで世界観が広がるところ

……にあると考えています。

アーティストや楽曲の世界観を統一して川柳の世界を表現するのか、あえて異質なものをぶつけて落差や不条理さを面白がるのか、どちらもありだと考えています。

Water Walkで記事を書くことになりました

上記のプレイリスト川柳を各種SNS(X、Bluesky、mixi2など)に投稿したところ、Water Walk編集長のEPOCALCさんからWater Walkで記事にしないかと持ちかけられました。

そこで、私とEPOCALCさんで何人かに声をかけてプレイリスト川柳を作ってもらい、それをもとに座談会をして記事にすることを提案しました。

以下、その座談会の模様をお届けいたします。

今回の参加者

  • 石丸まく人(いしまる まくひと)
    • 1986年生まれ。(自称)水木しげる崇拝者/岡林信康狂信者。それぞれの関心をまとめたひとり同人誌などを即売会で頒布。亀山書店の妖怪同人雑誌にて「妖怪をネタにした音盤」を紹介するコラムを連続掲載中。
  • 秋田温奏(ステップナー)
    • 2005年生まれ。高校在学中の2022年、瞬間的なときめきを軽やかに切り取った瑞々しい一首を詠み、小野小町文芸賞受賞。現在、都内の大学に在学しながら、インディーポップバンド「座布団忍者」やDJトリオ「汚褌」のメンバーなど、多岐にわたって活動中。

座談会

石丸まく人 石丸まく人といいます。岡林信康のオタクをしていて、調べたことをまとめた同人誌なりひとりファンジン的なものを作っています。

EPOCALC たしかURCがお好きなんですよね。

石丸まく人 そうです。URCとかベルウッドとかあの辺全般を20年近くずーっと好きでいるっていう。

EPOCALC 偉大な先人ですね。次に秋田さん。

秋田温奏(ステップナー) 普段は座布団忍者というバンドでギターとほんの少しボーカルをとっている秋田温奏(はると)と申します。今、大学3年生です。茨城県に住んでいます。

EPOCALC 座布団忍者はジャンル的にはギターポップっていう感じですかね。

秋田温奏(ステップナー) 自分たちでもなんと言っていいかわからないところではあるんですけど、最近はモダンポップと表現しています。

EPOCALC どのバンドと仲良いんですか?

秋田温奏(ステップナー) から探しとか越冬っていうバンド、そこら辺の界隈が多いかな。レーベルはNEWFOLKなのでそこのつながりもあります。

オー・ラーメン 国道沿いの 夜明け前

EPOCALC ではさっそく作品紹介に移っていければと思います。秋田さんからいただいた作品がこちらになります。

石丸まく人 味わい深いなぁ~って感じですね。「オー・ラーメン」って感嘆詞で始まるところがなんかいいですね。「国道沿いの 夜明け前」だけだとどういう状況なのかわかりづらいところがあるけれど、「オー・ラーメン」で始まって情感っぽいものが湧き上がってくるかな、みたいなところがおもしろいかなと思いました。

eclipse1228 僕はSugarっていう人たちがどういう人達なのか何にもわからないんですけど、「オー・ラーメン」って感嘆詞で始まるところがすごくおもしろいと思うんですよ。そこから「国道沿いの」「夜明け前」という情景につながる。この人が夜遊びしていたのか、あるいは深夜のバイト帰りかもしれないですけど、夜更け――夜明け前に近いときにラーメン屋さんを見つけて、「おー食いてえ」って思ったのかな。そういう心象風景が浮かび上がってきておもしろいと思いました。あとユニコーンからは労働者っぽい感じを受けました。

石丸まく人 なるほど。

eclipse1228 これがスガシカオの「夜明けまえ」なのかユニコーンの「夜明け前」なのかでも違うかなと感じました。

EPOCALC あと豊田道倫が入っているのが現代のリスナーっぽいなと感じがしますね。

秋田温奏(ステップナー) これは余白のあるいい一句なんじゃないかと思います。まず国道沿いの夜明け前のラーメン屋っていうのが僕には馴染み深く想像ができるんですね。都心から離れれば離れるほど、24時間やっているトラックドライバーとかに向けた味の濃いラーメン屋が国道沿いにあるんですね。

この一句は主人公――視点人物の背景に想像の余地がありますよね。友達とわいわいドライブをしてその帰り道で夜明けまえに「ラーメン屋だ」となった仲良しグループなのか、あるいはひとりで運転をしていてくたくたになったトラックドライバーなのか。様々な人物が想定できるんですけど、ひとつ言えるのはラーメンはみんなの前に平等に存在するということです。

楽しい気分だったり沈んでいる気分の人の前にもラーメンが現れると「オー・ラーメン」と言いたくなる。そんな魔力があると思っていて。国道沿いの夜明け前に立ち現れたラーメン……その美しさを一句にしました。

eclipse1228 すばらしい。たかがラーメン、じゃなくてすごく味わい深いですね。

秋田温奏(ステップナー) そうですね。だから誰かにとっては差し伸べられた救いの手のようでもあるし、誰かにとっては単なるドライブの楽しい道中の一貫であるかもしれない。でも、誰のお腹も満たしてくれる存在っていう。

ただ芸術点としてマイナスなのは、「オー・ラーメン」の後の (2026 Remaster) 、これちょっとマイナスポイントだったんですけど、どうしてもこの曲を使いたいということで。(俳句でいえば)季語を一句にふたつ入れちゃったねみたいな。俳句とかにもマナーがあると思うんですけど、(プレイリスト川柳において)これをどう捉えるかっていうのは難しいポイントですね。

eclipse1228 配信されているのがリマスターバージョンしかなかったらしょうがないですよね。

EPOCALC さっきeclipse1228さんからもちょっとあったと思うんですけど、夜明け前をユニコーンの「夜明け前」で選んだっていうのは何か背景があるんですか?

秋田温奏(ステップナー) 意図してユニコーンを選んだわけではないんですけど、そういう霊感はあるのかもしれないですね。ユニコーンは80年代後半のバンドブームのバンドで、24時間やっているラーメン屋というのはその時代ぐらいからのカルチャーだと思うんですよ。だからトラックドライバーのおじさんの青春時代を彩ったのはユニコーンかもしれないし、そのバンドの役割っていうのも想像をかきたてられますよね。ただ意図的ではないです。

eclipse1228 ユニコーンって「働く男」っていう曲があったり、労働や勤労をテーマにしていたりする。無意識のうちにそういうのが……。

秋田温奏(ステップナー) 無意識に影響されている可能性は大いにあります。大好きなバンドなので。

石丸まく人 Sugarの「オー・ラーメン」っていう曲はずっと大好きな曲なんですか?

秋田温奏(ステップナー) 特にそういうわけでもなく。

石丸まく人 Sugarって「くたばっちまえ アーメン」(Sugarのデビュー曲「ウエディング・ベル」の歌詞)のSugarですよね。3曲の中では異色だったんで。こだわりがあるのかなと想像しちゃいました。

eclipse1228 どういうグループなんですか?

秋田温奏(ステップナー) 3人組の女性ボーカルグループだったかな。あまり背景をよく調べてなかったんですけど、70年代後半から80年代の日本のひねくれポップというか、歌謡曲のフィールドど真ん中ではないグループのひとつとして聴いてました。どんな背景があるのか、そこまでSugarに対して興味を抱いてなかったです。

僕はラーメンが好きなので、ラーメンに関する楽曲を見つけたときにおっ!ってなるんですよ。ディスクガイドか何かでこれを見つけて聴いてみようとなったときに、一番最後にラーメンの曲が入っているじゃないかというので、この曲を聴くようになったのかもしれないです。

一同 なるほど。

EPOCALC 集めているラーメン楽曲は他にもたくさんあるんですか?

秋田温奏(ステップナー) そうですね。ラーメン楽曲、なかなかないんですけど。

eclipse1228 ラーメンがお好きだからラーメンの曲も集めてるってことなんですね。

秋田温奏(ステップナー) そうですね。

eclipse1228 シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」とか矢野顕子の「ラーメン食べたい」とか。

秋田温奏(ステップナー) そうですね。あと「Ramen Waitress」というアメリカのベッドルームポップのHigh Sunnっていう人が出している、わりとThe Smithみたいなギターの音――「This Charming Man」直系サウンドみたいな曲があるんですけど、「Ramen Waitress」という曲は本当に好きです。

eclipse1228 おもしろい。

石丸まく人 後で聴いてみよう。

EPOCALC 「Ramen Waitress」いいですね。

eclipse1228 3曲あってどれをとっかかりにプレイリスト川柳作ろうと思ったのですか?

秋田温奏(ステップナー) 「夜明け前」ですね。作っていたときが夜明け前だったので、これは今いい句が読めるぞと思って。今は夜明け前だってなって、夜明け前からいろんなものを想像して、どんな夜明け前なんだ?国道沿いの……そして自然とラーメンに体が導かれた感じ。

eclipse1228 実際に深夜とか夜明け前にラーメン食べることもあるんですか?

秋田温奏(ステップナー) かなり多いですね。近所に山岡家があって。

eclipse1228 24時間営業のラーメン屋さんって山岡家かなって思ったんですよ。

秋田温奏(ステップナー) 後ろから前の一節をどんどん手繰り寄せていった感じがします。導かれたような気持ちでもありますね。奇をてらったとかではなく僕の生活に密接に関係があるような風景っていうのが、Apple Music側が僕に提示してきたような気がします。機械との連携が取れたという感じです。

そういうときってあるじゃないですか。シャッフル再生したら今の気分にぴったりの曲ばかり流してくることが僕のApple Musicは多いんですよ。今回プレイリスト川柳を作るときにもシャッフル機能とか検索機能とかいろいろ使ったんですけど、たぶん僕のことをよくわかっていて。スマホをポケットに入れて生活しているので、同じものを彼も見ているんじゃないかという気がしました。

eclipse1228 やっぱり個人の生活がにじみ出ているっていうのもおもしろいですね。

EPOCALC 詩のおもしろいところですね。

eclipse1228 僕には絶対思い浮かばない。

EPOCALC 私もですね。国道沿いにラーメン屋があるイメージがあまり思い浮かばなくて。

秋田温奏(ステップナー) やっぱりそうなんですね。北関東とか千葉とかのイメージですね。

eclipse1228 僕は栃木県なのでわかりますよ。

石丸まく人 国道沿いの流通業の人がよく使うイメージですよね。

EPOCALC 秋田さんはご用事があるのでここまでの参加となります。ありがとうございました。


石丸まく人 有段者の次に私の作品なんですか。

EPOCALC いやいや、十二分でございますよ。

eclipse1228 EPOCALCさんが声かけたのが短歌とかやっている方で、僕が声かけたのが音楽好きの人なんです。

EPOCALC おそらくeclipse1228さんが音楽好きを呼ばれるだろうなと思っていたので。

eclipse1228 だからそこはあまり気になさらず。

EPOCALC では石丸さんの作品です。

酒のめば 楽しいことしかない どんぞこ

EPOCALC 破調ですね。

eclipse1228 「楽しいことしかない」って言っておいて、いきなり「どんぞこ」に落ちるという。テンションの落差がすごいですね。

EPOCALC 最初がクレイジーキャッツですからね。

eclipse1228 クレイジーキャッツで「楽しいことしかない」と来れば……。

EPOCALC 植木等のあの笑顔が浮かんでくるような。

eclipse1228 現実がどんなに厳しくても笑い飛ばしてやろうみたいな、クレイジーキャッツ的な感じで、最後「どんぞこ」で落ちるという。

EPOCALC 一気に夢から醒めた雰囲気があってちょっと怖いですね。

eclipse1228 酔っ払っているときはいいけど、アルコールが抜けて素面(しらふ)に戻ったら人生どん底だったみたいな、そういう感じを感じます。

EPOCALC それでは実際に作者の方からお話をいただきましょう。

石丸まく人 一応落ちがある感じがいいなと思って。下五(五・七・五の最後の五)に当たるところで、おやってなるものを作りたいなと思って作ったのがこれで。苦い感じとか、高田渡が歌う現代詩じゃないですけど、朗らかなんだけれど実は暗いとか、そういうのを極端に振った感じです。

これでいうと最初の出発点は「楽しいことしかない」なんですよ。筋肉少女帯の「楽しいことしかない」ってタイトルがいいなと思って。曲を否定する形になっちゃうんですけど、これを使うなら逆に対照的なもう一個を上か下かに置くべきだろうと思って「どんぞこ」を持ってきたんだと思うんです。ミドリは昔から好きなバンドなので。結構すぐぱっと曲名が出てくるバンドのひとつなので、ぱっと出てきて。筋肉少女帯ミドリはそっくりではないけれど、ふんわり近いような音像はあるかなと思って、プレイリスト的にもありだなと思って。じゃあ、上五(五・七・五の最初の五)をどうしようって思って、いろいろ好きなミュージシャンなり曲を手繰ってたらクレイジーキャッツがかかったって感じですね。

……っていう構造解説みたいになっちゃうんですけど。体験に根ざした感じではなく、そういう感じで作りました。

EPOCALC ロジカルに作っていったんですね。

eclipse1228 高田渡を例に出してましたけど、そこが石丸さんっぽいところかもしれないですね。フォークっぽいところだと思うんですよ。

EPOCALC そうですね。

eclipse1228 生活者の目線で世を嘆きつつがんばっていく――がんばっていこうじゃ違うかもしれないですけど、日々やり過ごす。それこそ岡林信康の「山谷ブルース」的な。

石丸まく人 そうですね。「酒のめば」だと。そういう意味では秋田さんの感じにも近いのかもしれないです。秋田さんよりもちょっといっちゃってる感じがしますけど。

eclipse1228 実体験というよりも趣味嗜好がそっち(フォークソング)だから、好きな音楽の世界観に近いものができたみたいな。

石丸まく人 『ガロ』の漫画とかそういうのが好きだから、貧乏くさいをちょっと超えちゃった貧乏感みたいなのがやっぱり好きなんだろうなと思いますね。

eclipse1228 おもしろいです、これも。

EPOCALC いい作品だと思います。石丸さんからはもう一首いただいています。

なぜわざわざ カナリア諸島にて 鬼退治

石丸まく人 これは一番受け狙いですね。坂本慎太郎さんのトップ曲、Amazon Musicなのでトップなんちゃらみたいな感じで曲が並んでいるじゃないですか。坂本慎太郎さんの曲を並べて「なぜわざわざ」と「鬼退治」が、やっぱり坂本慎太郎さんの曲名はヘンテコでおもしろいなと思って。じゃあ、これと何をつなげたら落差が出ておもしろいかなって思って、何曲か考えたら「カナリア諸島にて」がリゾートっぽくて「鬼退治」と合わないなっていう感じで落ちとして作れるかと思って。

eclipse1228 これね、僕すごくおもしろいと思ったんですよ。

石丸まく人 坂本慎太郎さんそもそもの面白さを借りた大喜利って感じです。

eclipse1228 坂本慎太郎っていう人の持つユーモアセンスに異質なものをぶつけてくるっていう。僕が最初にサンプルとして作った山崎まさよし金属恵比須の曲を使った「昼休み 阿修羅のごとく パンを焼く」と方法論としては近いのかもしれない。鬼ヶ島だからカナリア諸島、島がちゃんと合ってるところがレベル高いですね。

EPOCALC 坂本慎太郎の「鬼退治」って中古の車で鬼ヶ島に行く話ですよね。だからカナリア諸島に旅行する日本人って結局それと似ている、みたいなちょっと穿った、批判的・風刺的な目線でも見られると感じますね。

eclipse1228 なかなか奥が深い気がします。

EPOCALC 意外と掘り応えがある。

石丸まく人 友川カズキって人が好きで。友川カズキの言葉で好きなのが「自己嫌悪と自己顕示欲こそ表現の源であり、その落差こそドラマ性の核」(『友川カズキ独白録』2015年、白水社)と言っていて、すごい大好きな言葉のひとつなんですけど。基本的に極端なものをふたつ並べたときの落差でいかに“おもしろ”を出せるかというのは、自分で何かを作ろうとするときの根幹というか指標にあるなっていうのが、この二句にも受け狙いとして現れているような感じがします。


EPOCALC 実は今日いらっしゃることができなかった方が一名いらっしゃるんですよね。

eclipse1228 紅炎さんって方にも僕がプレイリスト川柳を作ってくださいとお願いしたんです。今回通話はご参加できなかったので、本人不在のところで感想を言い合いましょう。原稿は公開前に確認してもらうつもりですけど。

EPOCALC もちろんです。

eclipse1228 ご本人に嫌だって言われないように。

恋さらば ひとり生きて 生きてゆく

EPOCALC では紅炎さんの作品。こちらも複数いただいておりますので、ひとつずつご紹介していければなと思います。

EPOCALC 星野源キンモクセイと来てるのが音楽のプレイリストとしてきれいだなと思います。

eclipse1228 ゴスペラーズの「ひとり」もそうですよね。ポップなみんな知っている曲から始まって、みんな知ってるわけじゃないけれどポップな流れで。

EPOCALC 邦ロック的なバンドに最終的に行くところに断絶みたいなものを感じますよね。

石丸まく人 あえてトゲナシトゲアリというのが、それを選ぶということのメッセージ性みたいなのを感じますね。

EPOCALC アニメのバンドを敢えて選ぶというのが確かに。

石丸まく人 トゲナシトゲアリっていうのが「中指を立てたくなったら、小指を立ててください 」 っていうようなメッセージのあるアニメとその作中バンドで。そんなに裕福でないような恵まれてはいないような女の子5人がバンドを組むお話なんですけど。それである種の抵抗みたいなものをまぶしているんですよ、曲なりアニメのメッセージにも。「恋さらば」みたいなところに対する、私は強く生きていくんだみたいなのが、敢えてこれを選ぶことでメッセージ性を強めているような感じがするなっていうのを感じます。だから星野源とかキンモクセイと並べて異質な感じがするっていうのも狙いなのかもって。穿った見方をするような。

eclipse1228 紅炎さんってポップな音楽も聴くし、マスロックとかも聴くし。ワントラックアルバムが好きで、アルバムが1曲ならジャンル関係なく聴くものすごい音楽趣味の方で。それと同時に声優好きでもあるんですよ。だから、トゲナシトゲアリを最後に持ってきたのは、石丸さんの分析通りだと思います。

あと思ったのが、僕だと五文字のタイトル、七文字のタイトル、五文字のタイトルって選んじゃうんですけど、そういう区切りじゃないじゃないですか。「恋さらば ひとり生きて 生きてゆく」五、六、五になっているのかな。字足らずですけど、そのリズムの作り方がおもしろい。「生きて生きてゆく」も分けているわけですから。

EPOCALC 確かに。句切れがおもしろいですね。

eclipse1228 このリズムの作り方がおもしろいかなって。あとはゴスペラーズ「ひとり」は『アカペラ2』というアルバムのボーナス・ディスクなんじゃないかな。オリジナルじゃないですね、ジャケが。

EPOCALC 私ゴスペラーズ全然わからないんです…….。

eclipse1228 ゴスペラーズの「ひとり」はヒット曲ですけど、アカペラのアルバム『アカペラ2』のボーナス・ディスクがこれまでリリースしたアカペラ楽曲のベストアルバムみたいになってるんです。それを意図して選んだかどうか僕はわからないですけど、ジャケットの色味的に合わせたのかもしれないです。

EPOCALC なるほど。

eclipse1228 やっぱり紅炎さんのこだわり的にはトゲナシトゲアリを入れたところだと思いますよ。

EPOCALC なるほど。この並びの中に。最後に世界観が変わる感じがありますからね。楽曲が紐づいてるからならではと感じます。

紅炎さんからのコメント

恋さらば ひとり生きて 生きてゆく」ですが、「恋」と「さらば」という有名曲を使って、失恋をテーマにするのは比較的すぐ決まりました。そこで最後につなぐ曲名を探していたのですが、「生きて生きてゆく」が上手くはまりそうだな、と。トゲナシトゲアリは反骨的なバンドなので、恋破れて1人で生きていくことに、悲壮感よりも前向きな怒りと自立心のイメージを持たさせられたと思っているので、この辺りは石丸さんの読み通りで嬉しいです。
ゴスペラーズの「ひとり」は句切れを調整する意味でうまくはまりましたが、オリジナルのジャケットでないことには全く気づいていませんでした……ただそういう点で詠み手を超えた解釈が為されるのもプレイリスト川柳の面白いところだと思います。

メッセージ バイバイおやすみ みみみみみ

石丸まく人 これは問題作ですね(笑)

eclipse1228 これこそ本人の自作解説を聞きたかったです。

EPOCALC 文面だけのイメージだと留守番電話なのかなって感じがします。「メッセージです」の「メッセージ」が来て。「バイバイ おやすみ」って言った最後だけがテープが切れてバグって「みみみみみ」ってなっている情景が私は浮かびました。

eclipse1228 そもそもきゃりーぱみゅぱみゅに「み」っていう一文字だけのタイトルの曲があるのが意外でした。

EPOCALC そしてこの句も破調ですね。「バイバイおやすみ」なので。「メッセージ」と「み」部分は五ですけれど。

eclipse1228 五・八・五ってことか。

EPOCALC 八だからなんか不穏な感じがするっていうのがあるかもしれないです。

eclipse1228 七じゃなくて八にすることでムードが変わるっていうのもあるんですか?

EPOCALC ありそうな気がします。

eclipse1228 それこそ短歌界の人に聞きたかったですね。

EPOCALC 字が多いとそれだけ早口になって、ペースが早くなっているイメージがあると思うんですよね。

石丸まく人 ある種のスピードコントロールみたいなものですよね。曲の作詞もそういうところあると思いますけど、一音にどれだけ言葉を詰めるかによってまた違うとか。音の密度もそうですけど。

EPOCALC アウフタクト的な雰囲気もあるかもしれないですね。

石丸まく人 この「み」「み」「み」「み」「み」って全部改行している。この字面の感じもかなりおもしろいですもんね。

eclipse1228 突然横書きから縦書きになったみたいな。

石丸まく人 小説でもライトノベル的やSF小説とかでも、意識して視覚的にわざとちょっと変わった置き方をするみたいな版面の作り方をすることがありますけど、そういう狙った感じがちゃんと効果的に出ている。

EPOCALC 「み」の連続には具体詩の感じも受けますよね。ゲシュタルト崩壊していくような。

eclipse1228 ある種のバグっぽいですよね。レコードの最後で針を上げるまで延々ループしているみたいな。五文字だけれど実は「み」がずっとエンドレスで続いてるんじゃないか、みたいな。

石丸まく人 その場合1曲だけ違う人の「み」が入っている可能性とかもありそうですけれど。原曲であるきゃりーぱみゅぱみゅの「み」って歌詞を調べる限り、これもなかなかすごいですね。

EPOCALC 見てみましょうか。

石丸まく人 中田ヤスタカ仕事ですね。きゃりーぱみゅぱみゅだからそうなのか。

EPOCALC これも「み」をひたすら繰り返す歌なんですね。

eclipse1228 ぱみゅぱみゅの”み”なんですかね。

石丸まく人 自己言及系。ヒップホップみたいですね。

EPOCALC 自己紹介の歌なんですね。

紅炎さんからのコメント

メッセージ バイバイおやすみ みみみみみ」ですが、問題作と言われて嬉しいです(笑)
プレイリスト川柳を作った方を見ていると、大抵3〜4曲で構成していることが多いので、めちゃくちゃ多い曲数だと面白いなと思って、1モーラの曲名を使いたくて「み」を選びました。
それだけだとトリッキーなだけなので、同じ文字を使う必然性が欲しくて、(LINE等で)メッセージを送っている途中に寝てしまい、同じ文字を何度も送信してしまうシチュエーションを想定しました。

後編へ続く

実はもうおふたりにプレイリスト川柳の作成をお願いしており、もうひとつ座談会を開催しました。そちらの模様は後編でお届けする予定です。

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