『GeoGuessr』からディグる。

企画

GeoGuessr(ジオゲッサー)が面白すぎる。本当に。こればっかりやってる。

GeoGuessr – Let’s explore the world!
GeoGuessr is a geography game which takes you on a journey around the world and challenges your ability to recognize your surroundings.
www.geoguessr.com
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GeoGuessr(ジオゲッサー)とは、Googleストリートビューを使った場所当てゲーム。ランダムに表示される地点が、果たして世界のどこなのか、写っているものから推測する……というルールだ。ルールこそシンプルだが、とにかく奥深い。その奥深さは「世界のあり方の多様さ」に支えられているといってもいいだろう。

たとえば、ヨーロッパの横断歩道標識ひとつとってもこんなに違う。車のナンバープレートボラード(車止め)といった人工物のほか、草木の生え方そのへんの鳥、はては土の色まで、あらゆるものが場所特定の材料だ。風景として見過ごしていたものが、実はその土地の特性を反映している!そう気づいた瞬間には、世界の複雑さの片鱗に触れたような興奮を感じる。

……ただ、GeoGuessrで触れることができるのは視覚情報だけだ。つまり、世界の『音』にはアクセスできない。たとえばバンコクとプノンペンの街並みの違いはわかるようになっても、そこで聞こえる喧騒の違いは永久にわからないのだ。音を愛する人間として、それはちょっと寂しい。

そこで、こんなチャレンジを考えた。題して

ルールはこうだ。

まず、GeoGuessrを1ゲーム遊ぶ。次に、出題された国から最も気になった国を1国選ぶ。そして、その国で録られたフィールドレコーディング作品を探して購入する。

購入の予算は、今回はトータルスコア×0.1円とする。1ラウンドは5000点満点で、1ゲームは25000点満点。最大で2500円分のディグが可能だ。

さあ、世界の音にアクセスするぞ!

ラウンド1

どこかの住宅街が表示された。家と家の密集した感じがアジア、特に東アジアを連想させる。電柱に黄色と黒のしましまがある。これは台湾の特徴だったっけ……?移動して情報を集めてみよう。


違った!韓国だ。ハングルが出てきたら、ほぼ韓国にいると考えていい。北朝鮮は出題されない

後で調べたら「電柱にしましまがある」という特徴は台湾でも共通らしい。ただし、台湾の場合はしましまが地面まで到達していて、韓国はしましまが途中で終わっている……という違いがあり、そこで判別が可能なようだ。

しかし、韓国のどこにいるのかイマイチ検討がつかない。看板の文言は全然読めないし、地名もわからない。道路番号とかも見当たらない。どこだ……?ちょっと寒そうだし北部の方とか……?

外した。日本海側の都市・浦項市(ポハンし)だった。

とはいえ、4417点は悪くないスタートだ。この調子で行けることを願いつつ、次のラウンドに進む。

正解: 韓国 浦項
スコア: 4417点

ラウンド2

あ、この雰囲気はアメリカの北部っぽいぞ。もしくはカナダのオンタリオ州なんじゃないか。

ちょっと移動すると星条旗を発見した。アメリカの人々はかなり愛国心が強いので、こういうふうに街中に国旗が飾られていることも珍しくない。

道路のセンターラインも、アメリカの特徴である黄色2本。カナダは基本的に1本で、2本線のセンターラインがないわけでもないが、国旗と合わせて考えればアメリカにいることは確定だ。

……しかしさっきのステージ同様、アメリカ北部のどこにいるのかがわからない。州道の看板とか国道の標識を探してさまよっても全然出てこない。これまでの経験的に、アメリカ北部が出題されたらミシガン湖周辺地域が正解のケースが多いように感じる。

……ここでどうだ?

全然違う。

正解は、ニュージャージー州の北部に位置する街・ブランチバーグだった。つくづくアメリカって広すぎる。

正解: アメリカ ブランチバーグ
スコア: 2296点

ラウンド3

ぜんぜんわからん。

太陽が南側に出ているので、とりあえず北半球にいることは間違いない。農村地帯っぽい。ヨーロッパの東の方……か……?

ヒョロっとした木製の電柱が独特だけど、この特徴のある国を知らないので使えない。

あっ、違うタイプの電柱もある。2本の支柱がAの字型に組まれている。なんか……

ルーマニア……?とかにそんな感じの電柱があったっけ……?とりあえず置いておくか。

〜30秒経ち、のこり2秒〜

うーん、なにか文字情報があればもう少し正確に判断できたんだけど……あれ?

……このボラード、絶対ルーマニアのやつじゃない!どこだ?!

スロベニアだ!スロベニアだった!

後から調べてみたところ、スロベニアのボラードはこのように上部が黒く、前に赤、後ろに白の反射板がついているらしい。

そしてルーマニアの電柱は全然似てなかった。スロベニアとルーマニアへの知識がなさすぎる。

正解: スロベニア プトゥイ
スコア: 3361点

ラウンド4

2ラウンド目のアメリカとちょっと似たような雰囲気を感じるものの、どこかアメリカっぽくない。オーストラリアかニュージーランド?かなり曇っているので、太陽で半球の特定ができないのが残念だ。

道路のセンターラインが白い。ということはやっぱりアメリカではないな。

あ、白地に赤のボラードがある。ニュージーランドがこういう特徴のボラードだったかな?

オーストラリアだった。

Meta List – A Learnable Meta World – Bollards

ニュージーランドのボラードはこう。白地に赤というポイントは共通しているものの、オーストラリアとは違って、反射板がポールを1周している。中途半端な知識を元に推測すると痛い目を見ることがそろそろわかってきた。

正解: オーストラリア タリー
スコア: 1086点

ラウンド5

さあ、次こそはきっちりした知識で国を絞るぞ……あ!

ヘブライ語!ヘブライ語がある!

ヘブライ語が中心的に使用されている場所は、イスラエル。ラウンド1のハングル同様に、出てきたらほぼ一発で場所を絞ることができる。

道を行く車のナンバープレートも黄色いし、

国旗もある。確実にイスラエル。

残り20秒。一旦ここにピンを刺して、残りの時間で地名の書かれた看板などを探そう。

どこだ!

どこなんだ!

わからない!

アルベル!

正解はイスラエルのアルベル北部。イエス・キリストが布教を行ったとされる、ガリラヤ湖の西にある町だった。

正解: イスラエル
スコア: 4604点


というわけで、トータルスコアは15764点。15764×0.1円で小数点以下を四捨五入して、1576円が音源の購入予算となる。

最もスコアが高かったのは最終ラウンドのイスラエル。逆に、最も低かったのは第4ラウンドのオーストラリアだった。

ただ、個人的に悔しいのはスロベニアだ。ボラードをもう10秒早く見つけていれば、少なくともルーマニアは選択肢から除外できた。曖昧な電柱知識でピンを置いたことも悔やまれる。今回はスロベニアのフィールドレコーディング作品を探し、同国への理解を深めることにした。

以下、探索して出会った2つの作品を紹介しよう。

探索結果

  1. Martina Testen & Simon Šerc – Biodukt

スロベニア出身の夫妻によって制作された、スロベニア〜イタリアの山中を舞台とした作品。鳥やカエルの鳴き声、川のせせらぎなど「まさにフィールドレコーディング」といった音がゆったり流れていく。

About – biodukt
Biodukt is a kaleidoscopic symphony of forest birds, dawn choruses, picturesque fields, smell of meadows and beech forests. A sound palette in perfect balance, a vivid portrait of flora, water and fauna – from fascinating birdsongs and croaking frogs to insect chirping, it’s a real listening experience. %
www.biodukt.net
No Image

公式サイトには『The Guardian』から受けた2020年4月のインタビューが掲載されている。
それによれば、Martinaはリュブリャナ大学の経済学部で『音環境が顧客の行動に与える影響の分析』をテーマに修士論文を執筆。「BGMに自然音を採用したスーパーでは人々が長く買い物をする傾向が現れる」という観察結果も含めリリースされたらしい。そうした実利的な背景の一方、アルバムを森の1日に見立てるコンセプチュアルさもあり、単に「癒しの森林サウンド」というパッケージングで終わっていないところが素敵な1枚だ。
価格はデジタルアルバムで6ユーロ。2025年8月28日時点で日本円に換算して1030円だ。

  1. Manja Ristić & Robertina Šebjanič – Hidden Adriatic

セルビア・ベオグラード出身でイギリスの王立音楽大学を卒業したバイオリニストでありサウンドアーティストのManja Ristićと、リュブリャナを拠点にサウンドアートなどの分野でも活躍するRobertina Šebjaničが「アドリア海とそこに流れ込む河川」をテーマに制作した、2023年の作品。

スロベニアは海に面した国であるものの、海岸は47kmほどで決して長くない。収録地はスロベニアのコペル、隣接国クロアチアのドゥブロヴニクなど、広く東アドリア海一帯となっている。「スロベニアの音を理解できる作品」というよりも「アドリア海の音を理解できる作品」といった方が良さそうだ。
素材をそのまま扱うような仕上がりだった『Biodukt』と比較すると、こちらはミュージック・コンクレート的な音源で、テーマも相まってなんとなく”対”の存在のように感じる。どっちも好き。
価格はユーザーが決定するName Your Priceの方式になっている。私は1576円-1030円=546円(3.18ユーロ)を支払った。

おわりに

ちょっとした思いつきでやってみた企画だったものの、想像以上に楽しかった。これがなかったら、私の人生でスロベニアの自然に思いを馳せる機会はなかったかもしれない。
このランダムな回り道が妙にしっくりきたのは、そもそもフィジカル音源のディグにも同じ構造があるからだと思う。中古レコードやカセットとの出会いは偶然だ。Geo-Disc はその偶然をGeoGuessrというゲームのプログラムに託しただけで、やっていることは意外と共通しているのではないか。
次はどこに飛ばされるのか、自分でも楽しみになってきた。

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