プレイリスト川柳を始めてみませんか【後編】

企画

はじめに

この記事はプレイリスト川柳について書いた後編となります。そもそもプレイリスト川柳って何?という方はぜひ前編をお読みください。

プレイリスト川柳を始めてみませんか【前編】
Walter Walkで初めて記事を書かせていただきます。eclipse1228と申します。さっそくですが皆さんはプレイリスト川柳をご存知ですか?えっ、知らない。もちろん知らなくて当然です。プレイリス…

今回の参加者

  • 西陣
    • 2007年生まれ。YouTubeグループ・雷獣のベテランち(青松輝)の歌集『4』を読み、短歌に興味を持つ。トロッコ問題はレバーを引く派。
  • 松たかコンヌ
    • 短歌や川柳を行うインターネットアカウント。2023年ごろからDiscordサーバーで短歌を始める。2024年末頃から活動の場をXに移行。いろんなお誘いお待ちしております。

EPOCALC 西陣さんと松たかコンヌさんにもそれぞれ自己紹介いただきたいと思います。西陣さんからお願いします。

西陣 西陣といいます。今、高専の4年なんですけど、短歌をちょっとだけやっています。この企画にお呼ばれしたのも突然で、びっくりしました。

EPOCALC 私はよく芸人さんのラジオを聴くんですが、たまに投稿が読まれていますよね。

西陣 もう最近ぜんぜん送ってないので一年ぐらい前になっちゃうんですけど、金の国っていうお笑いコンビの俳句の企画で何度か1位をとらせていただいたりもしました。

eclipse1228 すごい……。

EPOCALC 西陣さんは大喜利も有名な方でもあるんですよ。

西陣 ぜんぜん有名じゃないです。ぜんぜんやってないんで、もう。

EPOCALC では次に松たかコンヌさん、ご紹介いただけますでしょうか。

松たかコンヌ 松たかコンヌと申します。僕は普通にX(旧Twitter)に短歌をあげているだけの社会人です。楽しくやっている人の気を悪くするのもアレなので、ひとりでずっとやってます。ひとりで短歌をやっている社会人という自認を持ってはいます。

EPOCALC ありがとうございます。次世代文学さんなどで短歌を投稿していらっしゃるのをたまに見かけるイメージではあったんですけれども。松たかコンヌさんには無頼派のイメージがあったのですが、それは偶然そうなっちゃったんですね。

松たかコンヌ たぶんそうだと思いますね。特に意図してこうなったわけではないです。作っているものと人格が一致しているかって言われたらそんなこともないです。

EPOCALC ありがとうございます。松たかコンヌさんは結構脱臼したような短歌をたくさん読まれていて、でもその中になんかこう考えさせられるというか、これがある理由ってなんだろうって思わせられるような現代アート的な短歌を作られているので、今回お呼びしたという形になります。

eclipse1228 次世代文学って何ですか? 

松たかコンヌ 毎月、月末~月初あたりにX(旧Twitter)でこの月に作った短歌とかで募集して有志で評するイベントがあるんですよ。

eclipse1228 それはアカウントだったりハッシュタグなんですか? それともぼんやりした集まり――クラスタ的なものなんですか?

松たかコンヌ クラスタとしては規模がでかくて、次世代文学さんのアカウント自体もフォロワーさんの数は多いんですけど。ハッシュタグとしては #毎月短歌 みたいなハッシュタグがついています。

eclipse1228 それは見たことあります。

松たかコンヌ #毎月短歌 の投稿の母集団を形成しているのが次世代短歌さんの募集です。端的に言うと、「そのハッシュタグがついているなかで選者が選者独自の基準で良いと感じた作品を選出する」っていう。タイミングが合った時に、させてもらっています。

EPOCALC おふたりのお好きな音楽もお聞きしたいと思います。西陣さんからお好きな音楽を教えていただけますか。

西陣 僕はサカナクションばっかり聴いています。「怪獣」が主題歌のアニメ『チ。ー地球の運動についてー』を見ててそこからちゃんと聴くようになりました。今僕は神戸に住んでるんですけど、今年(サカナクションが)神戸でライブするらしくて、行きたいですね。

eclipse1228 チケットが取れるといいですね。

西陣 そうですね。どうやって取るのかもあんまりわかってないんですけど。

EPOCALC ぴあとかで取れるんでしょうか。がんばって。

西陣 チケットください!って(笑)。

EPOCALC 松たかコンヌさんは好きな音楽が別に松たか子っていうことではなく。

eclipse1228 明日~春が来たら~♪

松たかコンヌ それもめっちゃ懐かしい。(ハンドルネームの由来は)松たか子とは関係なく、すごい昔に適当に名前つけたんで。誰かが「松たかコンヌ」って挨拶を言い出して、すごいその響きが好きだったので使ってるだけなんですけど。

音楽は変遷がけっこうありました。もともと子供の――本当に幼少期は家族の影響でパンクとかずっと聴いてて。ちょうどNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDが出てきた時家族がハマり、その影響でヒップホップも聴いてました。地元が神奈川なのでその影響かわからないです。その後、GOING STEADYとかの青春パンクやロキノン系に。移ったり。

なぜか僕はヴィジュアル系とメタルも好きになって、そればかり聴くようになったりしましたね。そして高校に入って、その影響かわからないですけど、そこからMR. BIGとかExtremeとかのハードロックも聴くようになりました。あと、シンプルにアニメとか好きなのでアイドルソングとかアニソンとかもずっと聴いていました。

でも18歳ぐらいでジャンルとか別にどうでもいいなとなって、ジャンルとか気にせずに音楽を普通に聴くようになりました。SoundCloudをディグったり、サブスクのプレイリストを漁りにいったり、ディストリビューターのプレイリストを漁りにいったりしながら聴いています。あとはアーティストがアルバムとか出すときに、影響受けたプレイリストを出してくれるじゃないですか。あれを聴いたりしながら掘っていますね。

前はエモ・ラップにずっとハマっていました。インターネット・ラップとか。直近は、この2,3年はHyperflip/Dariacoreにハマっていますね。音楽の地平みたいなのでいくと”何でもありってどこまで何でもありなんだ?”みたいなのをやっている人が好きではあるんですけど、売れなそう~と思って聴いてます。でもめっちゃ好きです。

EPOCALC なるほど。そうすると最近はLost Frog Productionsとかそこらへんを聴かれている形ですかね。

松たかコンヌ そうですね。SoundCloudにいっぱい上げてくれるので聴いています。あとは意外とYouTubeのおすすめが優秀だなと思ってて、YouTubeのおすすめを見に行ったりしていますね。

YouTubeのおすすめレコメンドは優秀ですよ。「さすがGoogleだな」って思うんですよ。Spotifyのレコメンド的な感じではなくて、昔、適当にタワレコ入ってCD聴いてみたときに、「これかっこいいな」と思った感覚に近いなって思うんです。

EPOCALC 確かにYouTube漁りは楽しいですよね。そんなジャンルや地域にそんな音楽があるのかと知る機会になりますしね。では、おふたりにお送りいただいた作品の紹介をさっそくしていこうかなと思います。では西陣さんの作品から。

多分、風。 風、花、ノイズ、街 春風

EPOCALC まずeclipse1228さんの感想から。

eclipse1228 まず風景が浮かんでくるっていうか。この人がどういう状況でどう感じたのかがふんわり浮かび上がってきましたね。風が吹いてきて、街の中を歩いていて、春が来たんだなと感じたっていう。日食なつこさんの「風、花、ノイズ、街」という曲を真ん中に持ってくることで、空間描写が広がっているみたいな。

EPOCALC マクロからミクロになって、またマクロに戻っている感じになってますよね。

eclipse1228 あと「春風」がくるりっていうのもいいですね。くるりってひらがなじゃないですか。バンドのイメージとしても街とか日常に沿うイメージがあって。

EPOCALC 「春風」って他にもsumikaとかゆずとかいくつかありますけどね。

eclipse1228 他にもあるかもしれないですけど、そこをくるりにしたのがいいところなんじゃないでしょうか。

松たかコンヌ プレイリスト川柳ってめっちゃむずかしいと思いました。「風」の連打が強い。同じ単語の連打って解釈も違いがあって、ダメっていう人もいれば敢えてみたいな人もいるんですけど、これはもう後者のパターン。強く吹く風の圧がある。

風景の流れ的に「多分、風。」っていう状態から、風を通してピントの合い方がいきなり花。です。そこからノイズっていう街の風景や心情への乖離に、映像で捉えたらグリッジが入っているみたいな感じ。それと、街という大きな像に戻ってきたときに「春風」という帰結をするので、これはやわらかい風景なんだなっていうのがわかる。なるほどって思いました、組み立てが。

EPOCALC 緊張と緩和がありますね。

eclipse1228 結びが「春風」じゃなかったら、ノイズの意味がぜんぜん違ってきますよね。

松たかコンヌ そうです。まさにそうだと思います。

西陣 この川柳を作るうえで「風、花、ノイズ、街」って曲を入れたいなっていうのがまず最初でした。語感的にも単語の羅列が好きで。それを軸にした川柳にしようと思って、最初と最後の曲をどれにしようって悩んでましたね。

読点(、)に近い雰囲気の曲を探したときに、僕はそんなに音楽の知識がないんで「多分、風。」しかなくて。「風」がかかっていてちょうどいいかなと思って最初に持ってきました。

最後の「春風」を選んだ理由なんですけど、「風、花、ノイズ、街」の曲が春っぽい雰囲気満載で、そういう曲の後に聴く曲としてベストかなと思ったので選びました。

この3曲すべて恋愛的な歌詞になっていて、そういうところでもつながりがあっていいかなと思って3曲を選びました。

EPOCALC ありがとうございます。日食なつこさんの曲をまず最初に選ぼうと思ったのはなぜなんですか。

西陣 直感ですね。川柳にしようと思って思い浮かんできたのが一番最初にこれだったので。これをベースにしたいなという感じはありましたね。

EPOCALC 常日頃から聴かれている曲なんですか?

西陣 そうですね。サカナクションをよく聴くってさっき言ったんですけど、その次に聴くのが日食なつこさん。自分が聴いている曲で作りたいと思っていました。

EPOCALC これを真ん中にもってこようという直感の理由がすごく気になってきました。初めて知ったのはどこだったのですか?

西陣 日食なつこさんを知ったきっかけがM-1のプロモーションビデオ。「ログマロープ 」っていう曲を使って作っていたプロモーションビデオがあって、そこで初めて知ったんですけど、その直後――2個目ぐらいに出た新曲がこれなんですね。みんなと一緒のタイミングで知った曲というので印象に残ってますね。

EPOCALC ご自身にとっても印象深いというか、リアルタイムで好きな音楽家の曲を知れた感慨があるんですかね。

西陣 そうですね。サカナクションも昔の曲を後から聴いている感じになるので、好きな音楽家の新曲をリアルタイムで聴くのが初めての経験でした。音楽をちゃんと聴くようになったきっかけもそこなので……。

EPOCALC 原体験や初々しさみたいなものがあったりするのかもしれないですね。

松たかコンヌ 気になるなと思ったのが、この並びだけでぱっと見たときには「風、花、ノイズ、街」なので、五、八、四になってるじゃないですか。これもあえてここは、主体にこの2曲目を置きたいとなったときに、”ち”の跨りをどう解消するかっていうので、どうしようか悩まれたのかなみたいなのを思ったんですけど。この”ち”の後に「春風」を持ってくるみたいな――要は四、八、五でも成立するじゃないですか。

EPOCALC 「春風」と「多分、風。」が逆になってるということですか?

松たかコンヌ そうです。スタートが字余りはなしのほうが気持ちいいからなのか、あえて最後「春風」を持ってこようと思ったのか。どっちなのか気になりました。

西陣 「多分、風。」が印象的なので、最初に持ってきたいなという感じはありました。「春風」って断定したものを最初に置くよりも、多分っていうところが最初にくると印象が変わってくるかなと思って。

“風、花、ノイズ、”で七なので、”街 春風”が最後になるじゃないですか。区切ったときに。その”街 春風”も雰囲気として良いものになると思いました。

松たかコンヌ そうか。完全に今数え間違いをしてましたね。五、九、四ってことですね。

eclipse1228 風、花、ノイズ、/街 春風 なんですね。

西陣 そうですね。川柳っぽくいうならそういう感じですね。

eclipse1228 五、七、六、最後だけ字余りってことですか?

西陣 そうですね。

松たかコンヌ 五、九、四と捉えていいのかちょっと気になりました。

EPOCALC やっぱり短歌を作られている方はそこを気にされるんですね。

松たかコンヌ それはもちろん。

西陣 解釈になってくると思うんで。僕はどっちかっていうと五、七、六で考えてますね。

eclipse1228 言われてから思ったんです。「春風」じゃなくて「春の風」っていうタイトルの曲もあるわけじゃないですか。

松たかコンヌ 仰るとおりです。この四には意図があると思ったんです。

西陣 曲自体が持つ雰囲気的にも「多分、風。」はアップテンポっで、「春風」はゆったりした感じなので。そういう緩急――スピード、テンポ的なところで見ても「春風」を最後に持ってきたかったというのはありますね。

EPOCALC 曲名で川柳を作ると定型に合わせるのが難しくなってくる。この曲いいけど音数合わないところを、どう解釈して辻褄を合わせていくところが肝になってくるのかなと感じましたね。

西陣 だいぶ悩みましたね。確かに。

eclipse1228 そう考えると、五七五にしたかったら最後の曲を三文字にするって手もあったわけですもんね。三文字の曲も探したんだと思うんですよ。”風”の流れと意味的な部分と曲的な部分とかを考えると、最後三文字で五にするより「春風」で六にしたと。

西陣 そうですね。

EPOCALC なかなか奥が深いですね。

eclipse1228 とても素敵な川柳ありがとうございます。


EPOCALC 松たかコンヌさんからはSoundCloudでいただいております。松たかコンヌさんの作品ですが、これはどう読めばいいのかわからなくて……。

松たかコンヌ これは100%俺から言ったほうがいい気がする。

逆位相 ふたりは自認 ラブソング

松たかコンヌ 「逆位相 ふたりは 自認 ラブソング」です。

EPOCALC アヴァンギャルドなものをいただきましたけれども。

eclipse1228 まず「松たかコンヌさんが曲を自分で作った」というお話をEPOCALCさんからうかがったんですよ。だからプレイリスト川柳という既存の曲のタイトルを使って川柳を作ろうみたいなのとはぜんぜん違うわけじゃないですか。だからどんなものが来るんだろうと思ってたんですよ。どんな曲か聞きたくなりますね、これ。

松たかコンヌ あまりにもコメントしづらいことをしてしまって、普通のプレイリストも用意してあるんです。

eclipse1228 プレイリスト川柳って僕が考えたのは、既存のものをどうパッチワークするかみたいなところがあるわけじゃないですか。ぜんぜんそうじゃないんで、これは曲を聴いてみないとどんな世界なのかわからないですよね。

EPOCALC 私は司会に徹しようと思ってたんですけど、感想いいですかね。

松たかコンヌ どうぞ。

西陣 もちろんです。

EPOCALC これは先ほどもちょっと仰っていたDariacoreの文脈だと思いますね。
eclipse1228さんはプレイリスト川柳をパッチワークのつもりだったと仰っていたじゃないですか。そしてDariacoreもパッチワーク。普通の楽曲が連綿とつながっているところを、パッチワークしていく面白さみたいなところがある。
今回の場合は、本当はパッチワークするべきプレイリスト川柳を、連綿としたものにしてしまった。Dariacoreとは逆ベクトルのことをやって似たような領域に辿り着いている感じがしたんです。

あと詠まない部分があるっていうのもすごくおもしろいですね。記号的というか。本来は全曲を詠まないといけないはずなのに”ここまでは関係ないですよ”っていう線引きまで、そしてその線引きさえ楽曲にするっていうのは記号的でおもしろいなと感じています。

eclipse1228 線引きの部分も曲なんですか?

松たかコンヌ もちろんです。

eclipse1228 そういう意味ではすごいメタ的ですよね。一次元上から見ているみたいな。

西陣 うわ~、これってありなんだって感じですね。

eclipse1228 現代短歌って今までの短歌よりもっと上の次元から考えるみたいな、そういうところがあるじゃないですか。そういうことをプレイリスト川柳についてもやっていただいたのかなと。

西陣 「革命早っ」と思いましたね。度肝を抜かれたというかなんというか。曲調がわからないんですけど、詠み手にはそこを想像する余地があるので、そこで楽しめそうな感じがしますね。

eclipse1228 チンポとか #chinpocore っていうのもやっぱり意味があってつけてるんですか?

松たかコンヌ もちろん。そこからDariacoreの文脈を解釈してもらったのかなと思ってるんですけど。

ひとつ大きく思ったのは、プレイリスト川柳は音楽をめちゃめちゃ愛する人から見たときには、「この曲とこの曲が並んでこういう作品になるのか」っていうのが、きもいことはわかるんですけど好きな娘のプレイリストを覗いたみたいな、ある種「人のプライベートを覗き見しているような」感覚になるんじゃないかと。詠む側の思いもそこに乗るのでおもしろいなって思ったんですよね。

その上でなんですが――これはあくまで僕の解釈なのでそれを前提で聞いていただきたいんですけど、これX(旧Twitter)で僕が好きじゃないところの話をするんですけど、「これポストしたらバズるっぽい」と思ったら、みんななんか趣を破壊しに来ませんか?趣を破壊してるのにお前それ「趣破壊してないです、自分は」みたいな面でやるんじゃねえよ、みたいなことをするじゃないですか。まず前提として、その行為が観測されたすべての創作物に対して、男女関係なく「チンポ」が垣間見えるというか。なんて言ったらいいんですかね……っていうか、「チンポチンポ」って言ってるんですが「チンポ」って文字起こしされるんでしょうかね? 

「音楽が好き」って自認の根底には「かっこつけ」みたいなところがあって僕はいいと思っている派なのですが、趣破壊は見るに耐えないなと……。

eclipse1228 男根主義ってことですか? 言い換えると。

松たかコンヌ 男根主義……そんなにむずかしいことじゃないです。なんかもうダサいというか。「お前のチンポ、垣間見えてるよ」みたいな。「僕の好きな音楽、これです」みたいな。かっこつけじゃん、みたいな。そんなに好きじゃないんだろ、みたいな。「そんなに吉本の劇場芸人好きじゃないけど、ここらへん好きって言ってれば女にモテるだろ」みたいな。

あなたのツイートも日頃のやつとかも見たけど、うまく言えないけど解釈不一致なんだよな、みたいな。

ここから導き出される結論は「お前チンポくさいよ」みたいな結論になっちゃうんだよな、みたいな。

これは別にプレイリスト川柳だけじゃなくて、川柳もそうだし短歌にも往々としてあるんですよ。

今流行っているものやみんなが共感することにスコープを合わせて会話していれば、その「みんな」の一員のなかにいれば、同化していれば、そこの人と円滑にコミュニケーション取れる。それってショートカットしてるやん、お前。好感度上げて作品で戦ってないじゃん、みたいなのはめっちゃあるので。ドン引きされてもいいから、お前がおもしろいと思うことをやった方がいいんじゃないとかは思う。

でも一方でプレイリスト川柳を通して、「これ川柳っぽいって言っていいんだ」みたいなのもあるじゃないですか。

(自分自身が)川柳とか短歌とかって本当に自由だと思うんで、権威とかルールとか押し付けてくる人とはすぐ揉めちゃうんです。「お前のルール内に俺いないしな」、みたいな。確かにあなたが川柳や短歌でご飯を食べているのであれば、学校や会社のルールを守らない奴みたいな論理で攻撃されたり排除されるのは構わないけれど、別にX(旧Twitter)に投稿するためには短歌の免許を持ってなければいけないとかないので。別に自由にやっていいじゃんって思うんですけど。

だから、勝手に熱くなられても「明日も仕事です」みたいな感じなんですよ。だったらお前のことは無視して俵万智読むわって思っちゃうでしょって。俵万智のほうがすごくいい短歌詠むので。トップオブトップなので。シティポップとかでも知らん偉そうなやつより山下達郎とか大滝詠一とか聴くじゃないですか。

でも、俺はその「自分のルール」の先にあると思うんですよね。真似事じゃないですけど、雰囲気から始めてみて、好きになって自分なりに見つけていくみたいな、そういう創作との向き合い方の終着点もあるので、その入口としてはプレイリスト川柳は最高だなってめっちゃ思いますね。

僕ら川柳や短歌は圧倒的に人口数が少ないので、そこらへんの部分からでも興味持ってやってくれる人が増えて、いろんな解釈が生まれるような仕組みは、絶対に門戸は広くあるべきなので素敵だなとは思いました。

自分がプレイリスト川柳をやるとなったときにまず思ったのは、「この画面内で『川柳』として取り扱ってよいところはどこなんだ」みたいな。例えば先程の文字列を当てはめていくみたいな話でいったら「別に曲名じゃなくても成立するじゃん」って思ったんですよね。バンド名でいいじゃん。曲名でもアーティスト名でもどっちでも成立するみたいなパターンもできるのか、と思って。そうしたら「これは無限大だな、例えば、ジャケットのモチーフが花、犬、猿みたいな記号で、こっちが川柳になってるじゃんみたいなパターンもあるな、みたいな。

そういうのをいろいろ考えていったときに、プレイリスト川柳自由度高いぞと思って。

この自由度の高さ故の面白さを、どうやったら伝えられるんだろうと思ったときに、いろいろ思いつく限りに横並びにして、行き着いたのが大量にアカウント作ってプレイリスト作ることだったんです。最初にやろうとしたのが配信サービスから全部アーティストも分けてリリースしようかなと思ったんですよ。

EPOCALC 壮大な計画ですね。

松たかコンヌ 最初の段階でめちゃくちゃ時間かかるし難易度高いとわかったんで、SoundCloudでやったんですけど。SoundCloudも複数アカウント作ってバンバン上げてくってなったときに、アカウント管理が大変だなと思って諦めて、まずはひとつのアーティストからかなと思って。

作り出してみたら、解釈として作っていくんだったらDariacoreとかの文脈――パッチワークを曲内で何回も行うみたいな文脈に行き着いていて。その中でプレイリストを一枚の作品と考えたときに、「ここからここまでは川柳だが、ここからここまでは川柳ではない」みたいな領域を作っておくことで「逆位相ふたりは自認ラブソング」っていう川柳をちゃんと出すことができるな、と。

これをそのままもってくると、やっていることと見えていることのズレのバランスが自分の中で悪いなと思ったので、思いっきりやるんだったらちゃんと思いっきりやろうと思いました。

EPOCALC あぁ、なるほど。

松たかコンヌ 曲のメロディーとか歌詞とかは全部自分で書いて。そこを録音したデータをSUNOに読ませて編集してっていうのをひたすら一晩中繰り返して作ったみたいな感じですね。

EPOCALC 一人で作ると無くなってしまうプレイリスト川柳のパッチワーク性を、「ここまで関係ない」であるとか、そうしたところで出していこうという意図ではあるんですかね。

松たかコンヌ 最初に余白をはみ出しまくったら、そこの間の視点は、創作者がいっぱいいるので、みんな埋めていくと思ったんですよ。

「こういう出し方もしてみよう」とか、いろんな文脈でやってくると思ったんですよね。いろいろ考えたんですけど、先程の山下達郎、大滝詠一みたいな関係性だけでプレイリストを作って、そこの私的(詩的)な要素を「ファンだったらこの文脈分かる」みたいにプレイリスト川柳を作ることも可能だし。とにかくこのプレイリスト川柳の可能性ってめっちゃ感じました。例えばアーティストがやってもいいじゃんと思ったので。

でも、言うより見せたほうが早いかもしれないように、実際に一度めちゃはみ出してみようっていうので、今回作ったって感じですね。

川柳の意図は、逆位相っていうのがそもそも「位相がぶつかりあうと音消えるよね」みたいなところの部分から着想しています。でもぶつかりあっても「自分以外の人」っていう物体を挟むと、今度は反転して音が鳴ると思うんです。そういう音楽にまつわる作品性みたいなものも残しておこうっていうので、プレイリスト川柳をやる意図みたいなものをちゃんと川柳に乗るように作ったって感じですね。

いろんな既存のものからパッチワークしようというのではなく、行為自体をパッチワークしようっていう文脈をちゃんと残すために、川柳は川柳として成立させる意図がありました。

EPOCALC なるほど。やっぱりメタ的な視点で作られてるんですね。

松たかコンヌ そもそも川柳っていろいろな解釈があるんですけど、僕は「そのときそのときの状態っていうのを一太刀で斬りつける」みたいな要素が強いと思っています。ばっさりいくものの方が多いなと。標語に近いと思っているので、プレイリスト川柳という事象そのものを川柳というもので捉えるとメタになっちゃうんじゃないかなと個人的には解釈しています。プレイリスト川柳を行う必然性が欲しいなと思ったので。

西陣 そこまで僕は考えが至ってなかったです。

松たかコンヌ 一言で言うんなら食らわせようと思っていたので。本来とは絶対違うので。ひとりでやってたら何も気にせず出すんですけど……、緊張します。

EPOCALC 普段の短歌も、先ほども申し上げた通り、人を食ったというか、先鋭的な作品をされてますけど、それも「短歌とはなんだろう」とか、そういったところを考えてのことということなんですかね。

松たかコンヌ そうですね。この世の50人ぐらいだけは今の状態に満足してない、今の世に俺と同じように不満がある奴がいるはずなので。そいつらと、「俺もだよ」と伝えたいというだけです。一般的な視点で考えたら、こいつうぜえな邪魔だなって思われてるんだろうなっていうのは自覚したうえでやっています。

eclipse1228 僕がプレイリスト川柳っていうものを考えたときに、EPOCALCさんから短歌のほうが川柳より盛り上がってるよねみたいに言われて。プレイリスト短歌のほうがよかったのかなってちらっと思ったのですけど、どう思いますか?

松たかコンヌ 盛り上がってないですよ。お笑いより恋愛の方が流行っていて、短歌よりお笑いのほうが流行ってるんで。ぜんぜん大丈夫です。短歌でもやってみようと思えばいいだけだと思うんで、そこは。

西陣 そうですね。どっちもあっていいと思います。

eclipse1228 短歌ではなく川柳にしたのは単純に川柳のほうが文字が少なくてやりやすいかな、俳句よりも季語とかの縛りがないし一番簡単かなと思ったからなんですけれども。

西陣 川柳は川柳であっていいし、短歌は短歌であっていいと思います。

松たかコンヌ 短歌のほうがダルいやつ多いですよ。

eclipse1228 こだわりを持ってる方が多いっていうことですね。

松たかコンヌ 言い回しを気にしないで大丈夫ですよ。僕のセリフとして書き起こして良いんで(笑)。

eclipse1228 プレイリスト川柳って結局何がおもしろいかって自分で作って思ったのが、五七五(字余りでも字足らずでもいいですけど)それ以外にアーティスト名とかジャケットとか他の要素があるところ。

松たかコンヌ まさにそう思います。

eclipse1228 他の要素があるのがおもしろいをさらに拡張してもらったんだなっていう。この一枚のスクリーンショットにいろんな情報があるわけじゃないですか。「逆位相 ふたりは自認 ラブソング」のところだけ切り抜いてもプレイリスト川柳なんですけども、スクリーンショットの幅を広げることで、いろいろな情報が増えてて、そこからいろいろなものが読み取れる。付帯情報の面白さ。

松たかコンヌ それは僕すごく感じました。

eclipse1228 それを拡げてもらったんだなっていう。

松たかコンヌ でもなんか、プレイリスト川柳を「ちんちんっぽい」と思っちゃったんです。なので、「これを始めた人は純粋な気持ちなんじゃないかな?」っていうのは思ったんですね。だから拡張しにいこうっていうのは思いました。

eclipse1228 僕が始めた人といえば始めた人なのかもしれないですけど、別に何にもあんまり考えてないですね。

一同 笑

松たかコンヌ そんなもんですよね。勝手に解釈するやつはいますよね。

プレイリスト川柳を思いついたきっかけ

eclipse1228 やっぱり言葉遊びが好きなんですね。単純に。昔、診断メーカーで曲のタイトルを前と後ろで二分割してシャッフルして出したらおもしろいんじゃないかっていうのを作ったことがあって。そういう遊びみたいなのは前から好きだったんです。もともといつプレイリスト川柳を思いついたか……思い出せない、ぜんぜん。

松たかコンヌ これもすぐ、「プレイリスト川柳ってあったな」ってなっちゃうと思うんで。一発ぶん殴って、とにかくお前ら楽しいことをもっとやれっていう感じで思ってはいます。それを他人に言うのも違うと思うんで、自分でやってみました。

eclipse1228 あ、思い出しました。Spotifyを退会するときにメッセージが出るんですよ。Spotifyを退会するときに「ありがとう また来てね」みたいなメッセージだったと思うんですけど、それがプレイリストで文章が作られてるんです。

松たかコンヌ へぇ~、すっごい好き。

EPOCALC 洒落てますね。

eclipse1228 それを見て、あっ、曲のタイトルで文章を作れるなら、五七五とかできるよなと思ったのがきっかけです。

松たかコンヌ 短歌とかは、サンプリングとか、川柳もそうなんですけど、汲み取られることが音楽より少ないので。作る身としては一抹の悲しさはあるんですよね。なので、そういうのすごく好きです、自分も。

eclipse1228 パッチワークと言いましたけどサンプリングと置き換えてもいいかもしれないですね。


終わりに

今回、WaterWalkで記事にするために5名の皆さんにプレイリスト川柳を提供していただきました。

私はプレイリストで川柳を作るのって面白そうだなと考えただけなのですが、その思いつきやアイデアに対して、真剣に向き合って考えて川柳を作っていただけたことが、とても光栄でありがたいことだなと思いました。ご協力いただきありがとうございました。

私はプレイリスト川柳について発祥者として何かを主張するつもりはなく、私がプレイリスト川柳について何か発信しなくても誰かが面白がってプレイリスト川柳を作ってくれるようになったらうれしいと考えております。

この記事を読んでプレイリスト川柳って面白そうだなと思った人がいたら、ぜひご自身でも作ってみてください。どんなSNSでもいいのでぜひハッシュタグをつけて投稿していただければうれしいです。

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