どうも、いとととです。
普段は「現代4コマ」など、さまざまな創作活動を行っています。また、空耳アワーの投稿者として全賞品を獲得したこともあります。
また、ビートルズで空耳を創るコツについて書いた記事もありますので、興味のある方はぜひご覧ください。
さて、今回は、私の創作の中でも転機となった現代4コマの作品「ベートーヴェンの4コマ」が誕生するまでの背景と製作秘話をお話しします。
この作品は、「現代4コマ」というスタイルを確立するきっかけとなった、思い入れの深い作品です。
漫画に囚われない4コマを模索
私は漫画の枠に囚われない4コマ作品を追求していました。でも、その当時「現代4コマ」という名前はまだなく、ずっと手探りの状態でした。
「これは!」と思えるような自分の中でしっくりくる作品がなかなか生まれなかったのです。
運命の「ジャジャジャジャーン」
ある日、ふとベートーヴェンの運命の冒頭にある「ジャジャジャジャーン」という音が、4コマとして表現できるのではないかと思いつきました。
- 「ジャ」
- 「ジャ」
- 「ジャ」
- 「ジャーン」
まさにこれが4コマの構造そのもの。
この瞬間、頭の中に電球がピコンと光るような感覚がありました。

試行錯誤
すぐさま制作に取り掛かりました。
まず最初に作ったのは、運命の冒頭を表現した4コマの枠の中に、引き伸ばしたベートーヴェンを一体だけ配置したものでした。

しかし、何かが違う。
そこで次に試みたのが、4コマの枠それぞれにベートーヴェンを一体ずつ配置し、最後のコマでは引き伸ばして「ジャーン」を再現するという形でした。

さらに、作品内に「運命を思い付いた瞬間」というタイトルも配置しました。
これでようやく、「漫画に囚われない4コマ」としてしっくりくる作品が完成したのです。
完成したベートーヴェンの4コマをTwitterに投稿すると、いつも以上の反応をいただけました。
この手応えから、「この形式の4コマはまだまだ可能性がある」と確信を持つことができました。
その後の作品
この作品をきっかけに、「卒業式の4コマ」や「カニ食べてる時の4コマ」など、続々と手応えのある作品を生み出すことができました。


ベートーヴェンの4コマは、私にとって創作のターニングポイントであり、現代4コマというスタイルの礎を築いた記念碑的な作品なのです。
アイコン・ミーム化
このベートーヴェンの4コマは数々の場面で現代4コマを象徴する存在となりました
私の初個展「いとととの現代4コマ展」では、この作品がフライヤー画像として使用され、多くの人々の目に触れることとなりました。

東京大学で販売された現代4コマのまとめ本「現代4コマ超入門」では、堂々の表紙を飾ることに。
多くの人がこの作品を見て、現代4コマの魅力を感じ取ってくれました。

夏に開催された大規模なグループ展「現代4コマオールスター展」では、この作品がキャンバスアートとして販売されたり、グッズ化されたりしました。


また、「◯◯を思い付いた瞬間」という表現が一人歩きし、多くの派生作品が生まれるとともに、ミームとしても広がりました。
『ブルーレットで遊べることを思い付いた瞬間』
— 現代4コマⵂマンガに囚われない新たな4コマ (@gendai4koma) March 29, 2024
作: 雀100( @suzumedancing )#現代4コマ pic.twitter.com/DstgzfnCSh
網膜音楽の誕生
ベートーヴェンの4コマから派生して、新たな概念「網膜音楽」が誕生しました。
網膜音楽とは、「目で見て音を感知する音楽」のこと。
例えば、ベートーヴェンの4コマを見たとき、「ジャジャジャジャーン」という運命のメロディを自然と頭の中で再生してしまいます。
音を一切使っていないのに音を感じさせる。これが網膜音楽です。
この新しい概念はSNSでも大きな注目を集め、多くの人が網膜音楽を作ってくれました。
網膜ボカロへの進化
さらに、網膜音楽の発展形として生まれたのが「網膜ボカロ」です。
網膜ボカロは、「目で聴くボカロ」です。
まだ何の旋律もついていない画像だけの新曲を提示し、それを観た人それぞれが自分の中で新しい音楽を作り上げます。視覚から音楽が生まれるこのスタイルは、多くのクリエイターにインスピレーションを与えました。
網膜ボカロには、キャラクター「網音モマ」が生まれました。このキャラクターは、多くの作品に登場し、コミュニティ内で親しまれる存在になりました。
また「網膜ボカロ投稿祭」や「網音モマワンドロ」など、多くのクリエイターが参加できるイベントも開催され、作品の幅がさらに広がりました。
ゲーム化
さらに、ベートーヴェンの4コマを題材にしたゲームが誕生しました。
クリエイターの間鞘ンさんが制作してくれたそのゲームのタイトルは、『「運命を思い付いた瞬間」を作ろう!』。

このゲームでは、4つのコマの大きさを操作し、原作であるベートーヴェンの4コマを完全再現することを目指します。シンプルながらも奥深い仕組みで、多くのプレイヤーが挑戦してくれました。
SNSでは「運命力は○○%!」と、プレイ結果を共有する投稿が相次ぎ、盛り上がりを見せました。
しかし、原作の再現度である運命力100%を達成するのは至難の業。
その挑戦に挑むプレイヤーたちの姿は、まさに運命そのものを掴もうとする熱意に溢れていました。
このように、ベートーヴェンの4コマは、多くの人を巻き込み、様々な表現方法や楽しみ方を通じて、新しい文化として広がりました。
この作品の始まりは、ふとした思いつきでしたが、それが多くの人に共感され、共鳴していくことで、網膜音楽や網膜ボカロといった新しい分野まで生まれました。
これほどの広がりを見せたのは、
- 小さなひらめきを形にする挑戦
- それを楽しみ、応援してくれる人々
この2つがあったからこそです。
ひらめきを形にする第一歩
新しい発見やアイデアの種は、実は日常の中にたくさん潜んでいます。
普段何気なく目にしている風景や音楽、アートなど、あらゆるものに少しだけ違う視点を持って向き合ってみる。それだけで、新しい世界が広がることがあります。
たとえば、
「これ、何かに似ているかも」
「これを4コマで表現したらどうなるだろう?」
そんなふとした思いつきや、日常に対する少しの好奇心が、アイデアのきっかけになるのです。
たとえば、ベートーヴェンの4コマを始めとする現代4コマは、「4コマって漫画でなくてもいいよな」という発想から生まれました。
こうした何気ない気付きを形にしてみる試みが、新しい表現の扉を開く鍵になります。
アイデアの例
来るもの拒マンホール
点字ブロックが迫ってきても避けずにいるマンホールに「来るもの拒まず」といったフレーズを掛け合わせ、新しい意味を持たせたものです。
暗記しやすい
街中で見かける、一部の文字が赤く書かれた看板。その看板に、学生が使う赤シートを重ねてみると、「暗記しやすい」という全く新しい文脈が生まれます。
これらは、「これって何かに似ているな」「こうしたらどうなるだろう?」という発想から生まれました。
普段見ているものにほんの少し違う角度から向き合うだけで、新しい価値や楽しさが見つかるのです。
名前をつける大切さ
キャッチーなネーミングを付けることも、アイデアを形にする上で大切な要素です。
名前がつくと、アイデアは認識されやすくなり、人に伝えたり広げたりする力が生まれます。
「現代4コマ」や「来るもの拒マンホール」は、名前そのものがユニークで、その発想を一目で理解させる力があります。
アイデアを試し、シェアする
アイデアを思いついたら形にして、気軽にシェアしてみましょう。
SNSに投稿するだけでも、他の人からの反応や意見が新たな気づきを与えてくれることがあります。実際に動いてみることで、意外な展開や広がりを見せることも少なくありません。
アイデアは独り占めせず、みんなにも試してもらうことで、さらに新しい可能性が広がっていくのです。
あなたも試してみませんか?
大それたことをしようとしなくても、「やってみたらどうなるだろう?」という軽い気持ちで動いてみることが大切です。ベートーヴェンの4コマも、最初は小さなひらめきを形にしただけのものでした。
ですが、その小さなひらめきをきっかけに、多くの人が共感し、作品が予想外の広がりを見せるようになりました。ひとつのアイデアが、新しい文化や楽しみ方を生み出す力を持つというのは、驚くべきことです。
あなたも、現代4コマや網膜音楽を作ったり、新しい概念を作ったりしてみませんか?
ちょっとしたひらめきを形にしてみるだけで、予想外の楽しさや発見が待っているかもしれません。
あなたのひらめきが、新しい世界を生み出すきっかけになるかもしれません。
ぜひ、挑戦してみてください!
最後に
ベートーヴェンの4コマは、現代4コマという枠を超え、網膜音楽や網膜ボカロなど、多くの新しい文化や楽しみ方を生み出してきました。その根底には、見慣れたものをほんの少しだけズラしてみる視点や、気軽にチャレンジしてみる精神がありました。
これからもベートーヴェンの4コマは、さまざまな楽しみ方や予想外の広がりを見せていくことでしょう。その行き先を見届けるのが楽しみでなりません。

ベートーヴェンの4コマが、全国の音楽室に飾られる日も、近いかもしれません。
いとととです。
空耳アワーの元常連。現代4コマ/網膜音楽・網膜ボカロ
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