再演vol.1 ライブレポート

企画

10/12に行われたWater Walk主催のイベント・再演

音楽ライブももちろん、お笑いから様々な出演者が登場する予定です。

実は、記事執筆時点(編集部注:開催前日)で既に匿名のライターからライブレポートをいただいています!最近のライターさんは仕事が早くて大変助かります。



私が何の気なしに立ち寄ったイベント「再演」、それは余りにも異様なものであった。これはそもそも現実なのだろうか?今朝起きてからの出来事は夢だったのではないだろうか……。しかし、あの時からまだ一睡もしていないし、逆に覚めてもいない。まだ夢の中にいるのだろうか。

今書くことは現実では到底あり得ないことだが、実際にあった出来事を子細に記したものである。もとも、夢の中の住人である読者にとっては、極めて常識的な事実を書いているとしか思えないかもしれないが。

17:00 – 開会宣言

まず、主催であるWater Walkの編集長が登場した。流暢に開会の言葉を述べる。その言葉の波はとどまることを知らず、効きすぎた暖房装置のように我々に押し寄せる。

「……歯磨き粉の哲学について考えよう。青いターバンの少女がダビデ像を飲み込む瞬間にサティのピアノで泳ぐ鮭は、火曜日の午後三時にのみ産卵する。その卵から孵化するのは透明な数学であり、幾何学は靴下を履いて逃走する。かんざしを食べたiPhoneとアパートメント・マンションが構造力学的にひかれあうのは必然かつ可能であって、故に今度またまんだらけで散髪するときには墨色のコバルトを持つ……」


10分後、EPOCALCは突然黙った。正確には、まるで最初からいなかったかのように忽然と消えた。会場には微かに檜の香りが残った。

17:10 – DJ人生

DJ人生のセットは完璧だった。完璧すぎて、誰も曲が変わったことに気づかなかった。

後に判明したのだが、彼女は10秒間のループを172回繰り返していたのだった。観客の時間感覚は狂い、ある者は「30分が3時間に感じた」と証言し、別の者は「むしろ5分だった」と主張した。会場の時計は午後5時23分で止まり、まだ動いていないらしい。

17:40 – 石蹴り遊び

石蹴り遊びの演奏が始まった。最初の音は無音だった。二つ目の音も無音だった。三つ目で、ようやく音が鳴り始めた。しかし四つ目の音でまた無音に戻ってしまった。

彼らの音楽は南米文学のように非線形であった。観客の誰かが「これはプログレなのか?」と問うた。イエスでもありノーである。

さとしきの漫談

さとしきが登場した際、彼は既に笑っていた。観客も笑った。何も面白いことは起きていなかった。

彼が最初のジョークを言う前に、会場後方の男性が「鍵が、鍵が……」と言いながら笑い転げ、椅子から落ちた。「これから言うつもりだったネタだったのに……」とさとしきは困惑した表情で語った。観客はさらに爆笑した。

18:20 – 零進法

零進法のDJは余りに革新的過ぎて、もはやDJと呼べるのか怪しかった。彼はカセットテープ、MD、そしてなにやら透明な立方体を次々に使用した。選曲は完全にランダムであると同時に、完全に計算されていた。トラックが始まる前にそのトラックが終わり、2つの曲が逆方向に同時進行した。

最も驚くべきは、彼が「まだリリースされていない曲」をプレイしたことだ。観客の一人が「これ、今年出る予定の原███の██じゃないか?」と叫んだ。

それを聞いた零進法は肩をすくめた。

「僕は未来と過去の区別がついていない」

誰も理解できなかったが、全員が納得した。

19:00 – John Tremendous

John Tremendousが舞台に現れた時、彼は透明だった。完全に透明ではない。70%ほど透明だった。彼を通して後ろの壁が見えた。

「演出ですか?」と不安そうにスタッフが尋ねた。

「いや、存在が希薄になっているだけだから。心配しないで」と彼は答えた。

彼の弾き語りは美しかった。美しすぎた。2曲目で観客の3分の1が涙を流し始めた。4曲目で会場の天井に亀裂が入った。そしてどんどんと彼の存在は希薄になっていった。

John Tremendousの声は周波数の可聴域を超えていた。最終的に犬だけが完全に聴き取れる音域で歌い始めた。会場に犬はいなかったにもかかわらず、全員が「聴こえた」と証言した。

セットの最後、彼は完全に透明になった。拍手だけが虚空に響いた。

19:40 -かねひさ和哉(蓄音機)

1950年代からやってきたタイムトラベラーのような風体のかねひさ和哉の蓄音機セットは、時間旅行そのものだった。

蓄音機が高速で回り始め、ある一定の速度を超えてからは逆回転を始めた。

「音速を超えると、過去の音が聞こえるんです。光速を超えると時間旅行ができるように」

音楽は時間を遡り、ついには「レコードが発明される前の音」になった。絶対に聴けないはずのその音を、観客は確かに聴いた。

20:10 -いとととのプレゼンテーション

いとととのスライドは8次元空間に展開された。観客は3次元しか知覚できないため68%は見えなかったが、全員が「完全に理解した」と主張した。

最も奇妙だったのは、プレゼンが終わった後、観客全員が「自分が発表者だった」と主張し始めたことだ。まあ、本当は私が発表したのだが。

20:20 – 浅井直樹

浅井直樹が舞台に立った時、観客の何人かは「これは蜃気楼だ」と囁いた。それほどにまで伝説的で、神秘的で、実態感が無かったのである。

「これは来週作曲する予定の曲です」と彼は告げた。では今歌っているその曲は?彼は答えなかった。ただギターを爪弾き続けた。音は過去と未来の上で震えていた。

20:50 – こんぺいとう雑誌

こんぺいとう雑誌が話し始めると、言葉が空中で結晶化し始めた。文字通り、結晶である。彼の冗談は幾何学的な形状をとり、会場の空中を漂った。

観客の一人が「これは漫談なのか、それとも錬金術なのか」と問うた。こんぺいとう雑誌は考え込んだ。「両方ですね。どちらでもないですね。」と答えた。これは完璧に正確だった。

彼の最後のジョークは誰にも理解できなかった。しかし全員が笑った。笑いは3日間続き、火曜日の昼にようやく止んだ。

21:05 – 越冬

越冬の演奏は暴力的だった。物理的な意味で。最初の曲で会場のグラスが全て割れた。二つ目の曲で椅子が浮遊し始めた。三つ目の曲で、時空に小さな裂け目が生じ、幾ばくかの人が飲まれた。

彼らの音楽は冬を運んできた。10月の会場に雪が降り始めた。気温は急降下し、観客の息は白くなった。

21:35 – 閉場

観客が会場を出た時、外は来年だった。

「時間を荒っぽく使い過ぎたかもしれませんね」と、消えたはずのEPOCALCが言っていた。

【編集部注】内容の正確性については当日確認される予定です。

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