
私の家にはRATがあります。確か2年前にメルカリで7000円くらいで売ってたやつです。購入の際は「安いな」としか思っていなかったのですが、考えてみれば安いものには相応の理由があるはずで、このRATもその例外ではありませんでした。ここ半年、これを踏み込むと途端に音が出なくなったり、小さくなったりして挙動が不安定になり始めてしまったのです。

こうなってしまった以上、RATはその役目を果たすことが難しくなってしまいました。ギターの音を派手に歪ませるディストーションから、給電すると微かに光るだけの情けない照明器具に成り下がってしまったのです。
ゆえに、このRATに別れを告げねばなりません。しかしこのRATは私が部屋の隅でギターを弾くためだけに使われていたので、外の世界を見たことがあまりないと思うのです。前の所有者がどのように使っていたのかは知りませんが、少なくともここ二年は外の世界を見ていないはず。それならば、別れの儀式としてRATに外の世界を見せてあげるというのがいいんじゃないか。
ということで、RATと散歩をしたいと思います。

RATを片手に歩きます。RATは家の中のものだ、という観念が強く頭に残っているので、やはり不思議な気持ちになりますね。人通りが多い道に出ると不審に思われないようRATを鞄にしまうのですが、そうするとRATと散歩しているということを忘れがちになる。難しいところですね。
今日は目的もなく散歩する、というわけではなく、昼から映画を見て夜に吹奏楽部の同級生の卒業演奏会みたいなやつに行くという予定があります。今は映画館(イオンシネマ京都桂川)に向かっています。

着きました。記事だと一瞬ですが、実際は普通に一時間くらいかけて移動したのが味気ないですね。ちなみに、偶然中学の時の同級生と同じ電車に乗り合わせて互いの近況を話しました。相手はまさか私の鞄に生身のRATが押し込まれていることは夢にも思わないでしょうね。

RAT入りの写真もあります。RATと背景のどちらにピントを合わせばいいのかわかりませんね。
というわけで、映画を見てきます。見る作品は「侍タイムスリッパー」です。

大友しゅうまが絶賛してたので見に来ました。見るぞ~
……
……
(微ネタバレ注意)見ました。評判通り超面白かったです。結構SNSで話題になってたけど、観客は中高年の人がほとんどでした。隣の人のツボがヤバくて、主人公が不良少年に暴行されて自分の吐瀉物で転ぶシーンで笑ってました。怖。
この映画では幕末の武士が現代にタイムスリップするのですが、彼は当然現代のテクノロジーや生活環境にいちいち驚くわけです。そこで思ったのですが、この武士がRATを見るとどう思うのでしょう。エレキギター(?)の音を歪ませる(??)ための電子機器(???)と説明したとしても、おそらくギターの概念すらない幕末の武士には到底理解しえないのでしょうね。
私は小さい頃、そこそこの頻度でおばあちゃんと一緒に時代劇やドラマを見ていたのでどこか懐かしい感じがありましたね。時代劇のストーリーはたいてい「型」があって、それがマンネリ化したために時代劇は衰退したという説明も可能だろうけど、しかし「型」の威力というものは侮れないとも思うのです。一年くらい前に友達に連れられてSTU48というAKB系のアイドルのライブを見に行ったとき、そのライブで初披露の新曲(もちろん誰も聴いたことがない)にもかかわらずファンたちがコールを成功させていて圧倒された記憶があります。
その時の映像がこれです。「型」があることでしか得られない一体感だよな、としみじみ思います。この話ぜんぜんRATと関係ないな。

演奏会までは時間があるので、付近を散歩します。天気も良く、RATと散歩するには最高ですね。近くに花壇に水やりをしている人がいると、どうしても警戒してしまいます。

知らない土地を歩くのってやっぱり楽しいですね。ここで見かける人たちも、各々の人生があって自分と全く無関係に暮らしているということを考えると、世界って広すぎると思ってしまいますね。
いや~でも今日は天気も良くて本当にいい日だな~!!!!炭酸でも飲もうっと
ん?
あっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

あーーーーーー…………
やってしまいました。この世界には鞄の中に炭酸を入れて歩くと「振った」判定になり炭酸が噴き出てしまうバグがあったのを思い出しました。

撥水の服だからまだよかったけど!!!!!
そうだ!RATは無事か……!?!?

無事でした。まあ無事なら良いか……。心なしかRATも動揺しているように見えます。
気を取り直して再開しましょう。

マンホールがありました。私は全然違うのですが、たまに日本各地のマンホールについて異様な知識量を持つ人がいますよね。

置いてみました。いいですね。
ここで、意外とRATを町中に設置すると面白いかも、と思い始めます。

なんかかっこいい。RATの無機質さとマッチしています。

RATを投函。


市バスを待つRAT。

題「恋人たち」
……いいですね。楽しい。
こんなことをやっているうちに演奏会の時間が迫ってきたので、移動します。

移動しました。

異形矢印があって嬉しいですね。

着いたので、見てきます。
……
……

見てきました。みんながんばってて偉かったです。吹奏楽にRATの付け入る隙はないので、どこか肩身が狭いような気分になりましたね。
……というわけで、RATと散歩してみました。RATにもいろいろ見せてあげることができたので、良かったんじゃないでしょうか。最後に、帰り道で撮れた写真を張って終わりたいと思います。

カッケ~~~
以上です。
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